ピーター・ワッツ (www.rifters.com) は、海洋生物学者とSF作家のハイブリッドという珍しい経歴を持ち詳細で莫大な科学技術の知識を作品中に投入することで知られており、これにより作品の信憑性を上げるとともに、細かい点を追及してくる読者から身を守っている。
カナダの国民的新聞であるGlobe & Mail誌において、現代のもっともすぐれたハードSF作家の一人に数えられ、デビュー作の「Starfish」はニューヨークタイムズ誌により「卓越した本」に選ばれている。
ワッツの最新作「ブラインドサイト」は、意識の在り方に対しての熟考に基づいている。スペースバンパイアに対する不健康なまでの執着にかかわらず、米国では哲学から神経心理学に至るまでの大学学部教育で取り上げられている。ヒューゴ賞をはじめとするSFジャンルの様々な賞にノミネートされたが全て落選した。しかし、他言語への翻訳版では、なぜか複数の賞を得ている。
これは、ワッツに対する批評家の評価が二つに分かれていることを反映している。例えば「Behemoth」は、Publisher's Weekly誌においては「クラークの『海底牧場』とギブスンの『ニューロマン サー』の手に汗握る融合」「21世紀ハードSFの新星」と評価された。一方で、有力書評誌のKirkus誌においては「本当に気持ちが悪い」「恐ろしいエロ本だ」とこき下ろされた。(ワッツはどちらの見方も歓迎している)ワッツの作品はさまざまな言語に翻訳されている。またワッツは愛猫バナナと共に権威ある学術雑誌であるNature誌に登場したことがある。
ここ数年、ワッツの執筆活動は少なかった。ビデオゲームの小説版と、少数の短編小説を発表しただけだった。この短編小説によってのちにヒューゴー賞を受賞でき、また「まだ見ぬ映画の二次創作」の分野でシャーリイ・ジャクスン賞を獲得している。
この間に、ワッツは人食いバクテリアに感染して死にかけたり、米国の国境警備隊に殴られて入国禁止になったりした。最も重要な出来事は、「ブラインドサイト」の続編にあたる「Echopraxia」を書き上げたことだ。これは2014年夏にも出版される予定だ。
ワッツはそれより前に日本を訪問できることを楽しみにしている。それまで生きていられたら。
文 ピーター・ワッツ / 翻訳 はるこん実行委員会
主な作品:
「島」SFマガジン2011年3月号(ヒューゴ賞受賞)
「天使」SFマガジン2011年8月号
『ブラインドサイト』東京創元社
公式サイト( http://www.rifters.com/ )にて、これまで発表された一部作品が読めます。